この映画、猫が出てます

猫が出てくる映画の紹介と批評のページです

ロマンシング・ストーン 秘宝の谷

  製作:1984
  製作国:アメリ
  日本公開:1984
  監督:ロバート・ゼメキス
  出演:キャスリーン・ターナーマイケル・ダグラスダニー・デヴィート
  レイティング:一般(どの年齢の方でもご覧いただけます)

  ◆◆ この映画の猫 ◆◆
  役:☆☆(脇役級)
    主人公ジョーンのペット
  名前:ロミオ
  色柄:茶白

南米・コロンビアの秘宝を巡り、恋と冒険とアクションが炸裂。なめてかかれぬ難解映画???


◆バック・トゥ1980年代

 インディ・ジョーンズのような冒険活劇、監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)のロバート・ゼメキス。宝の地図を持った男女を悪者が追いかける、パターン化した取るに足らない娯楽映画と、この映画をあっさり片付けるのはちょっと待ってください。この映画は、主人公が女性、脚本を書いたのも女性、そして大衆的なヒットを狙ったもの、というところから、この時代のアメリカの一般的な女性像を見ることができるはず。そこにちょっと目を向けてみましょう。

◆あらすじ

 ニューヨークに住むロマンス小説家のジョーン・ワイルダーキャスリーン・ターナー)は、出版社に原稿を届けに行こうとしたとき、自分の部屋に届いた姉宛の郵便を受け取る。それは姉の殺された夫がコロンビアから郵送したものだった。帰宅すると部屋がめちゃくちゃに荒らされ、ギャングに拉致された姉から電話が入る。郵便には宝物の地図が入っているので、それを持ってコロンビアのカルタヘナのホテルへ来てほしいと言う。
 コロンビアにやってきたジョーンは、英語のわかる男に教えられカルタヘナ行きのバスに乗るが、それは行き先の違うバスだった。不審に思ったジョーンに話しかけられ、運転手がミスしてバスが横転、ジョーンが途方に暮れていると、さっきジョーンにバスの案内をした男がジョーンに銃を突きつける。そこに一人の若い冒険家風の男(マイケル・ダグラス)がやって来て男を猟銃で追い払う。ジョーンはこの男を道案内に雇って一緒に歩き始めるが、ジョーンに銃を突きつけた男が武装した男たちを率いて現れ、二人を狙い撃ち、二人はジャングルの中を逃げ、ようやく一息つく。冒険家風の男はジャック・コルトンと名乗り、いつか船を買って世界中の海を旅したいと言う。二人は宝の地図を見て姉の救出について思いを巡らす。ジョーンを狙った男はゾロという、秘密警察的な組織を作りジョーンの姉の夫を殺して宝を狙う張本人だった。
 ジョーンとジャックは、途中の村で車を手に入れ、ゾロとその手下や、姉を拉致したギャングの一人(ダニー・デヴィート)に追いかけられながらカルタヘナ行きのバスが出る町にたどり着く。道案内はここで終わりだったが、多くの困難を共にした二人には熱い愛が芽生えていた。二人は甘い夜を過ごす。
 翌朝、宝物の地図に示された場所に行き、大粒のエメラルドを手にしたジョーンとジャックは、ここでもゾロとギャングに追われ、カルタヘナにたどりつくが、ギャングのアジトで「宝石のありかを教えろ」とジョーンがワニの餌食にされそうになってしまう・・・。

f:id:nekobijin:20220322151315j:plain

◆おお、ロミオ

 主人公のジョーンに飼われる茶白の猫はその名もロミオ。新作を書き上げたジョーンは、いい気分でロミオに人間用のツナを丸ごと一缶、パセリを飾ってごちそうします。ロミオ君、ちょっと大柄な猫。日本の普通の猫より一回りか二回り大きめの感じです。猫って、前足を持ってだらーんと持ち上げると意外に伸びて、「猫って長い」と驚くのですが、ロミオくらいの大きさだと1m近くになるのでは? 『グロリア』(1980年/監督:ジョン・カサヴェテス)のときに出てきた猫もロミオくらいの大きさのよく似た猫です。
 『グロリア』の記事で、主人公が危険な仕事などに出かけるときに飼い猫を置いて行って、帰ったあと猫がどうなったかまでは描いていない映画が多いと書きましたが、この映画はまさにそれ。開始から20分もしないうちに、ジョーンは出版社の編集者に「エサをやって一日一回抱いてやって」とキャリーケースと猫缶とともにロミオを渡して、コロンビアに旅立ってしまいます。
 この映画で猫よりたくさん出てくるのは、ギャングが飼っているワニ。人を脅す時のために飼っているのだとは思いますが、何頭も飼うコストの方が日常の仕事の利益を上回っているのでは・・・。だから、ギャングは秘宝を奪おうと躍起になっているのか!

  ◆◆(猫の話だけでいい人はここまで・・・)◆◆

      f:id:nekobijin:20210909154853j:plain

◆映画が人を選ぶ?

 いい映画を見ることは多くの喜びをもたらしてくれますが、その反対の映画は多くの学びをもたらしてくれるでしょう。『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』は、さてどちら? あらすじをまとめていて、こんなに苦しんだのは『燃えよドラゴン』(1973年/監督:ロバート・クローズ)以来です。何度見なおしてもよくわからない。
 アクション映画は見せ場のアクションシーンを引き出すために、無理やり敵対関係や不自然なシチュエーションをひねり出すのは仕方ないと大目に見たいのですが、人間関係と利害関係を読み取ろうとしても説明不足。こんなものと思って見るのが作法と言われれば、そうなのかもしれませんが、「ジョーン、その姉、姉の夫/ゾロ、ゾロの手下/コロンビアのギャング団/ジャック」の関係がわかりにくいのです。映像と短いセリフで間接的に各人の立場が描かれているのですが、見る側がその瞬間にすべてを理解し記憶するのは不可能。もう一歩順序良く掘り下げて説明すればぐっとわかりやすくなります。そこさえわかれば、ほかの細かいことは「まあこんなもの」でいい映画でしょう。
 そうは言っても、この映画は1984年のゴールデングローブ賞作品賞・主演女優賞を獲得、公開当時けっこうヒットしたので、やっぱりわからない私にセンスがないのかも。

◆白馬の王子

 映画は主人公のジョーンの新作小説のクライマックスの、劇中劇で始まります。悪漢に追いつめられた女性のピンチに、馬に乗った恋人がさっそうと現れ、悪漢を倒し彼女を連れてTHE ENDとなる西部劇。画面はタイプライターで小説を書き終えたジョーンの姿に切り替わり、ジョーンは自分で自分の小説に感激して涙を流しています。頭にはヘッドホン。集中しようと物音を遮断するために着けているのでしょう。立ち上がった彼女が日常生活に戻ると、買い物メモが鏡の周りにベタベタ。冷蔵庫はほぼカラなのに、棚にはお酒のミニボトルがぎっしりで、さっそく一杯。空になったグラスやロミオが食べ終わったお皿を、流しに片づけるどころか暖炉に乱暴に投げ捨て、仕事は有能だが家事能力に欠ける独身女性として描かれています(「おやじギャル」という言葉を久々に思い出しました)。
 その一方で、彼女の生み出すものは、白馬にまたがった王子様が女性を助けに来るという、ベタベタのラブストーリー。自分の小説に自分で酔いしれ、飼い猫にロミオなどという名前を付けるところからも、彼女はおやじ的な日常と裏腹に、ヒロイン願望を抱く相当なロマンチスト。それが彼女にこの職業を選ばせ、かつ成功して、何冊も単行本を出しているのです(実際、1980年代には女性が主人公の恋愛小説ブームがあり、日本でも翻訳物が多数出版されました)。

◆愛「され」る時代

 この、仕事はバリバリだが家庭的な女性役割は苦手という、デキる女性を揶揄するような偏見的な女性像を描いているのは、女性の脚本家・ダイアン・トーマスです。
 今の日本でも女性は家庭的であるべしという神話は生きています。「そんなことではお嫁に行けない」などと言われることはさすがに少なくなったのではないかと思いますが、つい最近までテレビ番組でも、通行人の女性に抜き打ちに料理をやらせ、できないと「女性としての価値がない」とでも言わんばかりに嘲笑するようなコーナーがありました(今は男性にも作らせているようですが、うまくできないと「あ~あ、お母さん!」などと、料理を教えるのは母親の役目、と言わんばかりのナレーションが!)。そして女性にも、男性に選ばれる女性としてふるまうことを率先して行う姿勢が見られました。アメリカは何事も日本より進取の気性にあふれていると思いがちですが、アメリカ映画でも、男性好みの女性であろうとする女性がたくさん登場し、歓迎されてきました。それが変わり始めたのは『エイリアン』(1979年/監督:リドリー・スコット)がきっかけではないかと思います。
 『エイリアン』より後のこの映画では、主人公が小説家という脚本家と類似の職業でもあり、ジョーンはダイアン・トーマス自身を重ね合わせ、やや自虐的な意味も込めて作られた人物だと思いますが、そうした自立した職業を持った女性であっても、本音では王子様を待っているという決めつけがまだ根強かったことをうかがわせます。だからこそジョーンの小説そのものの『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』は人々の無意識をくすぐり、ヒットしたのでしょう。

◆真実の愛?

 カッコいい男の役が得意(大好き?)なマイケル・ダグラス演じるジャックという男、一夜を過ごしたホテルで、ジョーンのためにフェミニンな服を用意し、自分は上下を白でキメるなど、まさしく王子様のようですが、実際は彼女が宝の地図を持っていることを知って、こいつとねんごろになったら自分の船を買って世界中を旅する夢を実現できるかもしれないぞと、彼女を利用する食わせ者の匂いがします。ただし、そう思わせておいてラストでは・・・という展開にはなっています。これぞロマンス小説!
 ラスト30分はワニも加わってのアクションシーン。真剣に見ようとすると疲れますので、何も考えずただただ頭を空っぽにして、目で楽しんでください。仕事に疲れた時などにぼーっと見るのもおすすめです。

 宝の地図に描かれた聖母像の部分を折りたたむとハートの形が現れ、それが宝のありかを示しているのですが、そのとき聖母像が一瞬アマビエそっくりに見えますよ。

 

eigatoneko.hatenablog.com

eigatoneko.hatenablog.com

◆パソコンをご利用の読者の方へ◆
過去の記事の検索には、ブログの先頭画面上部の黒いフチの左の方、「この映画、猫が出てます▼」をクリック、
「記事一覧」をクリックしていただくのが便利です。